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2022/03/09

コラム

農業参入

【企業の農業参入】農水の統計数値から読み解くトレンドと実態

昨今、一般企業の農業参入数は増加の一途を辿っており、農業界においてはとてもホットな話題となっています。今回は、そんな一般企業の農業参入に関する周辺事情や背景を、農林水産省の出している統計の数字を参考に紹介していきます!

農地のリースと農業参入

一般企業の農業参入が盛んになった背景には、平成21年(2009年)に「リース方式による参入の全面自由化」が行われたことがあります。まずは、下に示すグラフを見てみましょう。これは農林水産省が提供する「農地のリースを受けて農業経営を行う法人数の推移」を示したグラフです。

グラフを見ると、平成15年(2003年)〜令和元年(2019年)にかけて、農地のリースを受けて農業経営をする法人の数は右肩上がりに伸びていることが分かります。特に、前述した「リース方式による参入の全面自由化」が行われた平成21年以降の伸びが大きくなっています。

過去から現在に至るまで、法人が「農業経営を行うために農地を取得(所有)する」ためには厳しい条件を満たし、農地所有適格法人(平成28年3月以前は農業生産法人)であると認められる必要があります。ただし、「農地を利用しない農業を営む法人」や「農地を借りて農業を営む法人」である場合は、農地所有適格法人である必要はありません。

そして、この「農地を借りる」つまり「農地のリース」という点においての大きな変化が前述した「リース方式による参入の全面自由化」なのです。

元々農地のリース自体は可能でしたが、それは株式会社及び一般法人(NPO法人や社会福祉法人等)に開かれたものではありませんでした。平成15年には株式会社や一般法人の農地リースによる営農が認められたものの、リースできる農地は「全国の遊休農地及びその恐れのある農地」に限定されていました。その後段階を追って認可が降りる農地が広がり、平成21年に農地のリースの完全自由化がなされました。

つまり、「農地リースの株式会社や一般法人(NPO法人や社会福祉法人等)への解放」と元々存在した「農業参入需要」がマッチして農業参入法人の爆発的増加につながったと言えるでしょう。

農業参入する企業の業種は多岐にわたる

農業参入する企業はどんな企業が多いのでしょうか。農林水産省が提供している「農地リースによる営農を行う法人数の内訳(令和元年)」を見てみましょう。

1.農業参入と業種

まずは業種別の円グラフを見ていきましょう。「農業・畜産業」から「教育・医療・福祉」に至るまで様々な業態が農地リースを利用して農業参入をしていることが容易に見て取れますね。少しだけグラフの業種の解説と考えられるケースについて補足いたします。

全体の30%を占めているのが「農業・畜産業」。これはグラフの注釈に

※農業・畜産業は観光農園や菌床栽培を行っていた法人、一般の企業が子会社を作り参入した法人、酪農や養鶏を行っている法人等

とあるため、既に農業を営んでいる法人が別会社・ホールディングス等で参入する場合や、他の業態を営んでいた一般企業が子会社を作り、その子会社の主な業務が農業・畜産業であった場合は「農業・畜産業」に分類されることになります。

「農業・畜産業」に次いで多いのが「サービス業」。サービス業と一口に言っても様々なものがありますが、「飲食チェーンが農業参入を行なって、自社のメニューの原料を自社で作る」ケースなどはこちらに分類されます。

2.農地リースと借入農地面積

次に、借入農地面積規模別のグラフを見ていきましょう。どれだけの広さの農地を借りているかで分けたということですね。

グラフを見ると、50a未満が33%ですが、次点の「1ha以上5ha未満」が31%、3位の「50a以上1ha未満」が24%となっており、突出したものが見られません。これは業種が多様であるのと同じように用途も様々であることから、借入農地面積がばらついているためだと推察できます。

借入農地面積から用途を推察することはとても難しいですが、1ha以上借り入れている場合

  • ◎大手飲食チェーンが自社で露地野菜を生産するようなケース
  • ◎駐車場のある観光農園+直売所を運営するケース

などが想定されます。1ha未満ですと、

  • ◎農福連携で農業事業を始めて、福祉施設の雇用を創出するケース
  • ◎事業としてではなく、お試しで農業を始めてみるケース

などが想定されます。

3.農地リースと営農作物

営農作物別のグラフも見ていきましょう。

グラフを見ると、圧倒的に多いのが42%を占めるのが「野菜」です。その理由としては、

  • ◎野菜は栽培体系が確立しており、専門技術・知識がなくても栽培を成功させることのできる可能性が高い。(例) 灌水システム、温度管理システムなど
  • ◎播種(種まき)から収穫までのスパンが短いため、キャッシュが入るタイミングが早い

等のようなことが挙げられます。

野菜の次に多いのが「米麦等」です。本来、米麦は栽培にコストがかかる大型農業機械(トラクターやコンバインなど)が必須であり、参入障壁が高い作物です。にもかかわらず、グラフの中で2位になっている理由の一つとして、「農業の団地化」が挙げられます。

「農業の団地化」とは、市町村または企業が一定規模のまとまった農地を確保し、複数の個人や団体で農業機械を計画的且つ継続的に稼働させ、営農することです。この「農業の団地化」によって参入障壁となっていた大型農業機械の入手がクリアされ、農地リースによる参入が増えたのだと推察できます。

しかしながら、2021年の米価暴落をきっかけに、規模縮小や作物転換に踏み切る米農家が増えているのも事実です。転換先の作物としては、飼料用トウモロコシが増えてくるのではないかと予想されます。

  • ◎米農家はトウモロコシの栽培に必要なまとまった農地を用意しやすいこと
  • ◎国産の飼料用トウモロコシは供給に対して需要が高まってきていること
  • ◎乾燥機などの米生産に使う機械がトウモロコシにも応用できること

がその理由です。水田を利用した飼料用トウモロコシの栽培体系はまだ十分に確立されておらず、今後も注目していきたい作物の一つです。

農業参入する法人は大都市近郊に多い

令和元年に農地リースで営農を行なっている法人数を都道府県別に見てみると、1位が静岡県、2位が兵庫県、3位が山梨県、4位が埼玉県、5位が長野県となっています。(画像が見づらい方は、ダウンロードしてご覧ください)

農林水産省経営局調べ(令和元年12月末時点)を基に、FOODBOXでグラフ化

静岡県・山梨県・長野県に関しては元々農業が盛んな地域なため、農地として確保できる土地が多く、リースで参入しやすいのではないかと推測できます。

今回意外だったのが兵庫県と埼玉県のランクインです。この2県の共通点は東京・大阪といった大都市へのアクセスが良いこと。大都市近郊には、そもそもの企業母数が多いと言えます。

その他にも、リースによる農業参入企業数が多い地域の特徴としては

  • ◎農業参入に有利な特区制度がある
  • ◎積極的に農業参入に関する補助金を出している(例:山梨県北斗市)
  • ◎県として、農業参入窓口を設けている

などが挙げられます。

農業参入に関する相談はFOODBOXまで!

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

実は、今回紹介した統計数値には農業からの撤退企業の控除がなされていません。農業には魅力がたくさんあるものの、数字に表れない部分で撤退してしまう企業も少なくありません。

その理由の一つに、農業参入実現に向けてはたくさんのハードルがあり、専門知識やコネクションが必要な場面があることあげられます。FOODBOX株式会社では、農業参入を検討している企業様の支援に力を入れており、検討段階から実現に至るまで一貫してサポートいたします!

「農業参入に興味はあるけれど、何から始めたらよいかわからない…」といった抽象的な相談でも構いませんので、是非お気軽にお問い合わせください。ご相談は下の緑のボタンからお願いいたします!

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