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COLUMN

コラム

2022/03/31

スマート農業

『スマート農業』が現場に定着しない理由とは?課題と現状を整理してみました

「テクノロジーを利用した農業がイマドキで良いらしい…」。日々多くの課題を抱えている農業経営者にとって、アグリテック等と呼ばれるテクノロジーの活用、いわゆる「スマート農業」は非常に魅力的に映ります。しかし、その言葉の裏では、「何から使っていいのか分からない…」「適正単価・適正スペックの製品が少ない…」等、農業現場から多くの困惑した声を頂きます。

本記事では、そんな「スマート農業」が現場に定着しないのはなぜか?」と「スマート農業のあるべき姿とは何か?」の2点について、解説します。

ぜひ記事を読む際は「農業は特殊な業界だ」等といった色眼鏡は外して、スマート農業は今後どう変わっていくべきなのか、一緒に考えてみていただければ嬉しいです!

スマート農業の定着」とは何か

本題に入る前に、言葉を定義しておきましょう。

まず、「スマート農業」とは農家向けのデジタル製品全般を指します。次に、「定着」とは、「農家の皆さんが不自由なく本来の目的で製品を使えている状態」としましょう。

つまり、「スマート農業の定着」とは、「農家向けのデジタル製品全般を、農家の皆さんが、不自由なく本来の目的でスマート農業関連の製品を使えている状態」ということになります。

冒頭でも述べた通り、農家の方から「何から使っていいのか分からない」「適正単価・適正スペックの製品が少ない」等の声を頂くことは多々あり、これは現状スマート農業が定着していない状態であると言えるでしょう。

スマート農業が定着していないのはなぜでしょうか?議論の結果、理由は大きく3つにまとまりました。

  • ①農業界の構造や時代背景
  • ②農業現場とスマート農業製品の間に生じたギャップ
  • ③スマート農業に効率化以外の活用法のイメージが沸かない

それでは一つ一つ、解説していきますね。

①農業界の構造や時代背景

皆さんは、農業界のサプライチェーン(産業構造)をどれくらい理解していますか?

農家が生産した農作物の多くは、まず農協へ出荷され、卸市場を経て小売業者や外食業者へと渡ります。商品によっては加工業者や食品卸業者が間に入るパターンもあります。

このサプライチェーンを時代に合わせて発展させ、円滑に回す役割を担っているのが農協となります。しかし、最近は農協側の人材不足等の経営課題が顕著になり、さらに市況の変化も相まって、農家の「農協離れ」が増えているのも事実です。

では農協を抜けた農家はどうするのか?

農家自身で価格を決め、販路を開拓し、飲食店や消費者へ直接販売(直販)しているのです。この「直販」に対応しようとすると、ご想像の通り、生産→加工→流通→販売(直販)まで全てを農家が担うことになります。ここで、農家の仕事は明らかに増加しました。

従来の農家は、生産だけに注力していれば良かったため、業界全体で見ても生産部門の「コンバイン」や「トラクター」等の機械・製品が著しく発達しました。一方で、生産部門以外に関わるテクノロジーは、農業界ではほとんど発達していませんでした。

そこに目をつけた企業が次々と農業分野に参入し、スマート農業市場が形成されていきました。市場は広がりはしたものの、この長いサプライチェーンの中にバラバラとスマート農業製品があり、情報量の多さ故に、農家は選びきれない状態になっているのです。

②農業現場とスマート農業製品の間に生じたギャップ

「どのスマート農業製品が良いのか?」を正確に選ぶことができても、それが農業現場で実際に使える機能・単価であるとは限りません。

まずは、スマート農業製品の機能が現場に対応できなかったケースを2つご紹介します。

(1)テクノロジーが機能しないケース

農業現場の多くは、舗装がされていません。その為、「各種ロボットが試験圃場では走行出来たにもかかわらず、現場では走行できなかった」、「ロボットによる圃場管理をしようとしたところ、圃場の形がいびつでうまく連携出来なかった」といったことなどを耳にします。

(2)機能はしたものの、効果が見合わないケース

例えば、収穫作業を自動化する技術が導入されたとします。

収穫というものは「作物を収獲すればそれで終わり」ではありません。収穫したその日に、収穫物を倉庫に運んで、仕分け、出荷又は保管するといった一連の作業を行う必要があります。そうした時、仮に作物の収獲作業だけを自動化されても、スタッフの拘束時間を大幅に削減することはできないのです。

今後のスマート農業製品の開発者には、是非現場の作業オペレーションを見た上で開発頂きたいと思っており、我々もそうした取組みを全力でサポートしていきたいと思います。

農業現場は「自然環境の中で行われていること」と「農作業は連続的な作業であること」を念頭に、実用性の高い機能を作っていくことが大切です。

次に、スマート農業製品の単価についてです。皆さんは、農家のお財布事情をご存知でしょうか?

ご参考までに、1農家・農業生産法人当たりの年間売上規模とその軒数をご紹介します。2019年度の農業構造動体調査によると、以下のようになります。

  • ・1,000万円未満:約105万軒(全体の88.5%)
  • ・1,000万~3,000万円未満:約9万6,000軒(全体の8.1%)
  • ・3,000万~5,000万円未満:約2万軒(全体の1.7%)
  • ・5,000万円以上:約2万軒(全体の1.7%)
  • 合計:約120万軒

そのほとんどが、年間売上が1,000万円に達していません。

にもかかわらず、高額なスマート農業製品がリリースされる背景には、「その価格設定にしなければ、企業が投資回収しきれない」という現状があります。また、潤沢な資金がないようなスタートアップ企業では、資金調達が必須になり、継続性という観点から信頼が得にくい状況なのも事実です。

農家・農業生産法人当たりの売上規模だけ見ると、農業界はとても小さな業界です。ここから経費や人件費が引かれますので、利益として残るのは更に少なくなります。

一番スマート農業製品を使って欲しいのは、経営規模拡大期にある農家(年間売上5,000万円未満)ですが、月額1万円もするようなサービス導入や、1台500万円もする農業用ドローンの導入となると、スマート農業に踏み切るハードルは高くなってしまいます。

現場目線で作られた本当に良いスマート農業製品は、現場にしっかり足を踏み入れる必要があります。また、スマート農業製品の提供だけで「儲かろう」と考えるのは安易だと考えています。

③効率化以外のメリットのイメージが湧かない

例えば、近年増えている農業用ドローンですが、農薬散布の効率化ができることは分かっても、リモートセンシングで得られた生育診断結果をどう使えばいいのか、イメージが湧いていない農家の方が大半です。

蓄積したデータからは何が分かり、他地域と比較するとどんなメリットがあるのか等、効率化に付随する他のメリットが見えづらいということが背景にあります。

この課題を解決していくためには、丁寧に啓蒙していくほかありません。

また、スマート農業製品によって作業を効率化すると、時間や体力が余るだけでなく、場合によってはコスト削減にも繋がることがあります。スマート農業によって生まれたリソース(資本)を付加価値のある農業の実現のために再投資してみてはいかがでしょうか?

「スマート農業」のあるべき姿とは

前段でもスマート農業製品を提供する企業には、農業界・農業現場を十分に理解し、長い目線で誠実に向き合う姿勢が必要だとお伝えしました。

弊社CEOである中村によると、

「現状のスマート農業製品は、既存の栽培技術・体系の延長線上で、小さな単一作業を解決する様に設計・開発されており、ドラスティックに農作業全般を変えていくものは限られています。本当に変革を起こすのは、新たな省力化栽培技術・体系(例:水稲の乾田直播等)や新品種等と合わさって、それらを加速させるスマート農業製品です。

スマート農業を行うためには、世の中の情勢や社会課題にも敏感に反応して、常識に囚われずに製品を進化させ続けられるような柔軟性も必要ということですね。

「スマート農業」事業に関する相談はFOODBOXまで!

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

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