2024/07/31
コラム
会社紹介
新たなミッション・ビジョン・バリューに込めたもの(前編)
FOODBOX株式会社では、2023年夏、会社としてミッション、ビジョン、バリュー(MVV)を再策定しました。新しいMVVで動き出して1年が経過した今、変更した理由や、新たなMVVに込めた思いについて、前後編にわけてご紹介します。
新たなMVVについて
まず、当社の新たなミッション・ビジョン・バリューは、次のものとなります。
ミッションは、当社の理念であり食・農業界にもたらす結果を言葉にしたものです。
ビジョンは、その食・農業界を実現するために当社が将来どうなっていくべきか。
そしてバリューはその未来のために、当社社員の日々の行動を明確にしたものです。
MVV再策定の経緯
当社では、2023年初頭から半年をかけて、MVVの見直しを行っていきました。その見直しのプロセスをリードしてくださったのが、シカクのクリエイティブディレクターの原晋(はら・すすむ)さんです。
原さんとの出会いは、私(中村)が前職時代に原さんのワークショップに参加したことがきっかけでした。その縁で、2022年度より大分県県農林水産部が主催する「おおいた農業経営塾」での講師もお願いしてきました。県内の農家さんを対象としたこのプログラムの序盤で、原さんには、農家さんにとっての経営理念の重要性、及びその作り方や活用の仕方についてお話をしていただき、農家さんにもとても好評でした。
この内容を見て改めて、私たちにとっても、自社の経営理念を見直すことが必要なことではないかと感じたのです。創業3期目で業務が拡大してきていたことや、社員の増員により、会社として進むべき道を改めて考え、共有すべきフェーズにあったこともあり、2023年1月からの半年間を使って、原さんにワークショップを依頼しました。
元々のMVVについて
創業より当社が掲げてきたミッションは「自由で開かれた食・農業界を共創する」。地方農家出身の私が幼い頃から感じていた「閉ざされた農業界」というイメージを払拭し、オープンな業界にしていきたいという思いを込めて作成したものでした。
閉ざされた農業界は、農家単独で解決できる問題ではないため、私たちが農家さんと異業種の繋ぎ役(フードカタリスト)となり、共に開かれた食・農業界を作ることを目標として掲げていたのです。このミッションに沿う形で、創業初期にやろうとしていたことはほぼ実現してこれたと考えています。
新MVVを決めるまで
その上で、新ミッションは「つくる人から実りあれ。」というものに決めました。
策定においては、シカクの原さんと鈴木さんによる半年間のワークショップに、私を含めて社員5名で参加をして、10個程度のワークに取り組みながらディスカッションを重ねました。その中では次のようなテーマを取り上げました。
・FOODBOXはこんなことができる可能性があるのでは
・FOODBOX10(5/3)年後、どんな会社になっているか/なっていたいか
・FOODBOXに貢献できる能力は何か
これらのテーマに対して意見を出し合い、出てきたたくさんのキーワードを、原さんらに抽出してもらいました。その中で一番フィットするなと考え、選ばれたものがこの言葉でした。
なお、ビジョンとバリューも、ワークショップで出てきた意見を、グルーピングをし、編集をして、出来上がったものです。ニュアンスがきちんと伝わるよう、言語化、つまり言葉を選定し落とし込んでいく過程には一文字単位でこだわり、時間を十分にかけました。
「つくる人から、実りあれ。」に込めた意味
「つくる人」とは、ミッションの文章中にもある通り、第一に農家さん、つまり生産者の方です。
しかし、食・農業界に関わるつくり手とは、農作物を作るのに使う道具をつくる人、農家さんを手助けする何かをつくる人、売るために必要な場や資材をつくる人など多岐にわたっています。
また、私たちのように、人をつなぎコンサルティングを提供する立場の人間も、農家さんが働きやすい環境をつくる人ですし、自治体も農家さんのための枠組みをつくっています。これらすべてを、ひらがなの「つくる人」という言葉に込めました。そして、すべての「つくる人」に異なる最適なノウハウと、時代に即した農業の枠を超えたつながりを提供し、ともに歩むことを使命と考えました。
もう一つの要素である「実り」は、農作物の実りはもちろん、「つくる人」がまずはきちんとした利益を生めるという両方の意味を込めています。ワークショップでは、持続的な食・農業界はどうあるべきかという議論もしましたが、正しい利益を得て、持続的な経営を体現していくことが重要と確認し合いました。
特に、最初に農作物がないとその先につながりませんので、起点となる農家さんにまずは豊かになってほしい。流通も大切ではありますが、間にたくさんの卸業者が入ることで、構造的に、上流に近い農家さんが一番虐げられているという現状があります。まずは農家さんに利益がきちんと残ることが持続的な業界の有り方の第一歩であるはずです。そのような意味から、実り「あれ」という希望を表す言葉を選びました。
なぜ農業なの?という問いに対して、発信したいこととは
ミッションに付随する文章の冒頭、「なぜ農業に興味を持ったの?」という問いは、私が起業をした2019年頃、聞かれやすいことの一つでした。一般に、農業はもう終わってしまった産業、そしていわゆる3K(きつい、汚い、危険)な仕事と考えられていたのです。「農家とは助けてあげるものだ」という弱者としてのイメージもついて回っていました。
でも、これは非常に一面的な見方であって、実際に農業に携わっている人たちは、すごく輝いていて、自分たちの仕事に誇りを持ち、持続的に経営しています。日本のトップクラスの農家さんは、考えていることや、やっていること、それに伴う利益などすべて含めて、一企業体として非常に高いレベルを誇っているんだということも含めて、このミッションを通じて認知が広がればと思っています。
とはいえ、物価上昇や円安に伴う原料価格の高騰など、利益の部分では農家さんを取り巻く現状は昨今一段と厳しくなったのも事実です。農業は過去のものではなく、現在の産業として考えていく必要性を世の中に発信していきたいと感じています。
ワークショップと新ミッションによる成果
コロナ禍が過ぎ、時代が大きく変化するタイミングで策定をしたミッションですが、ことば自体は以前のものよりも柔らかくなり、とてもわかりやすくなりました。特に、関わる農家さんに共感いただくことが増え、うれしく思います。
社内の意思統一においても、ミッションをワークショップ形式で再策定できたことは大きな意味があったと思います。
創業初期の頃は、メンバーもまだごく少人数であったため、日常のコミュニケーションだけで十分考えを共有し合うことができました。しかし人数が増えてくると、私が発する言葉だけで会社の方向性を伝えるには限界がありましたし、私もまた、それぞれの社員がどういう意見をもっているかを知る必要がありました。
今、当社のクライアント構成比は、食・農業関連企業様が6割、自治体様案件が3割、農家さんが1割と、創業以来大きくは変わっていませんが、本ミッションを掲げてからは、案件数を少し絞り込み、一つの事業に対してより深掘りして伴走をさせていただくという形をとっています。この変更により、FOODBOX自体が、以前よりも余裕をもって、持続的な働き方を目指せるようにようになりました。当社のあり方も、新ミッションによって進化していると思います。
(後編に続く)