2024/08/05
コラム
会社紹介
新たなミッション・ビジョン・バリューに込めたもの(後編)
FOODBOX株式会社では、2023年夏に会社としてミッション、ビジョン、バリュー(MVV)を再策定しました。新しいMVVに基づき業務を行って1年が経過した今、これを変更した理由や、新たなMVVに込めた思いについて、後編をお届けします。(前編から読む場合は、こちら)
5年後のあるべき姿(ビジョン)について
本記事では、当社が2023年に策定した、ビジョンとバリューについてご紹介します。MVVの関係性は下図を参照してください。この中で、ビジョン(あるべき姿)は、ミッション(社会への約束)を果たすためになすべきこととして策定しました。具体的には5年後の目指す姿や目標について、ワークショップ形式で意見を出し合ったものをまとめました。
現在の当社の主軸となる業務は、食・農業界に特化したコンサルティング事業です。しかし当社では、机上の計画を提案して終わりということはせず、クライアントが抱える課題に対して、実務レベルで伴走しサポートしていくことを強みとしています。
そこで、コンサルティングという言葉は使わず、「フードプランニング事業」という名称でこの事業を進めています。
食と農業の業界での実務的な伴走というと、個人もしくは士業の方が地域に根差してやるケースが多い中で、「これはFOODBOXさんに相談したいな」と最初に思ってもらえるような存在になりたいと考えています。
例えば、家族経営を卒業し規模拡大フェーズにある農家さんや農業法人さんに、理想の相談相手としてFOODBOXをイメージしていただけるようになりたい。また、小規模農家さんとは、企業様や自治体様のプロジェクトを通じてつながり、サポートをしていきたい。それらを表すのが、「つくる人すべてが思い浮かべる最初の相談相手になる。」という言葉です。
またビジョンには「対等な関係」という言葉も入れました。
前編でも触れた通り、さまざまな「つくる人」が存在する中で、上流の「生産者」よりも、卸や流通、量販店等の販売に近い方々の方が立場が強いという現実があります。何か交渉や取引をする場合、決して対等の関係ではないのです。特に小規模な生産者は、より不利な立場になりがちです。
日本ではこのような状況が一般的になってしまっていますが、国によっては、相手が個人であっても企業であっても対等な取引相手として尊重されます。そうした対等な関係性こそが「持続性のある農業」ができるのではないか。
私たちFOODBOXも、相手の規模に問わず、同じ目線で膝を突き合わせてやらなければならないし、我々と一緒に伴走する方々にも、農家さんと同じ目線で対等に付き合っていただきたいと考えています。
4つのバリュー(行動指針)
最後に、ビジョンを実現するための当社のバリュー(行動指針)を4つに整理しました。
伴走
伴走は、創業当初から掲げてきて、大切にし続けていることの一つです。
十分に組織化された大企業であれば、コンサルが計画を作成して渡すだけで、それを社内で実行できるだけの人的リソースやキャパシティに限りがあります。しかし中小企業や小規模な事業主は、計画を実行するための人手や経験、資金や設備などが不足していることがほとんどです。だからこそ、相談をしてくれる。つまり、計画を作ることに価値があるのではなく、計画を共に実行して、結果が残る、何か変化が起こることが重要となります。
つまり当社では、私たちフードカタリストや関係する専門家が、「すべてのつくる人(お客様)」に対して、泥臭く、同じ目線で事業を実行し、成果を出すことに大きな比重を置いています。農家さんがお客様の場合、注力の仕方としては、計画に3割、実行に7割くらいのイメージです。
成果は、定量、定性の両面で捉えることができます。売上や新規顧客の獲得など定量的なものを目指す場合もあれば、品種の商標を取る、大学との共同研究で品種開発をするための座組みを提供するなどの、定性的なものを目指す場合もあります。
個性
個性とは、多種多様な相談に対応できるよう、社員それぞれが自分の得意や経験、専門領域で力を発揮するということです。
創業初期は、FOODBOXにできること=私(中村)の専門の領域を出ないという側面がありました。これからは、社員それぞれに個別の能力を発揮してもらうことで、よりお客様のニーズに応え貢献できる範囲を広げていきたいと思います。
また、専門性の高い案件への対応にも、それが可能な人たちを交えた座組みを作って対応します。例えば農地の移譲を伴うM&Aなどは専門性が高い相談の一つです。この場合、専門の弁護士、司法書士などに関わっていただくなど、食・農業界に精通する人材と共に、より高い成果を追求していきます。
共有
共有とは、社員誰もが、お客様に必要な情報や求められることを提供できるよう、当社全体として体制を整えていくことです。
「これについてどう思いますか?」「こういう人知りませんか?」「こういう情報持ってませんか?」というような、農業界の概況や事情、それに対する見解などは、お客様から尋ねられやすい話題です。社内で意見、情報、ネットワークなどを集約して共有し、ある程度同じレベルで対応できる状態が望ましいと考えています。
お客様が相談をしたいのは、相談に対してちゃんとした回答をくれる人です。学びやインプットも大切にしながら、常に会話やテキストで、常に情報共有できる状態を目指します。
成長
成長は、共有で触れた学びやインプットに大きく関わる部分です。当然、個性や伴走で成果を出すためにも、社員そして会社としての成長は不可欠です。
まずは個々がプロフェッショナルとして貪欲に学び続け、成長をしていくことが大前提と考えています。学び続けることで、提供できる幅や価値は確実に高まります。新しい領域の学びに挑戦することも大切で、それによって見える世界や味方が変わるという体験ができるでしょう。そこに食・農業の専門領域の知識を掛け合わせたら、できることの幅は格段に広がるはずです。
さらに、農業は世界情勢や世界経済、および天候など環境要因に非常に左右されやすい業界です。
戦争により、小麦価格が上昇すると、小麦の輸入が減る。すると国産小麦の需要が上がり、増産ができるようになる。一方で米は価格が安定しているので、米が人気となり、おにぎり店が増える。というように、すべて関連しあっています。そうした大きな動向にアンテナを貼ることは必要不可欠です。こちらについても、リアルな世界の動きを知ることで成長につなげていきます。
まとめ―改めて、MVV策定がもたらしたもの
今回策定したMVVを改めて見ていくと、創業期から何か大きく方向転換をした要素は、実はそれほどはなかったかもしれません。しかし、これまで明確に言葉にできていなかったことを言語化し、さらに書体や全体の印象にも、FOODBOXらしさが現れるよう、シカクの皆さんに整えていただいて「見える化」したことは、会社としては非常に進展があったと思います。
この1年、ミッションについては、社外の方にお見せする機会が多数ありました。しかしビジョンやバリューは、主に社内で確認し、迷った時に立ち返るべき場所として定めたものでしたので、社外の方に積極的に見ていただくことはなく、本コラムが初めてしっかりと対外的に発信をする場となりました。
当社の取り組みに興味をもってくださる皆様に、FOODBOXの思いを知っていただく機会となれば幸いです。