2022/07/08
コラム
スマート農業
農業参入
【企業の農業参入】売れる農業支援サービスの作り方
「スマート農業」をはじめ、農家向けのサービスやアプリは多数存在します。しかし、そのようなサービスの多くが、「なかなか売上げが上がらない…」という共通の課題を抱えています。今回の記事では、「農家向けサービスの多くが売れない理由」と「売れるサービスを作るためにはどうしたら良いのか」の2点をご紹介します!
これから農家向けのサービスを開発しようと思っている事業者の方はもちろん、現在運営しているサービスが売上周りの課題に直面している事業者の方も必見です!
農業支援サービスとは
農林水産省のHPによると、農家の方を支援する目的のサービスのことを『農業支援サービス』と呼ぶそうです。(この記事では以降、農家の方向けのサービスのことを『農業支援サービス』と呼びます。)
農業支援サービスとは、農業現場における作業代行やスマート農業技術の有効活用による生産性向上支援等、農業者に対してサービスを提供することで対価を得る業種のことをいい、データ分析やドローン散布等の作業受託、農業機械のシェアリング、農業現場への人材供給等、農業を支援するサービスのことです。
農林水産省 農業支援サービス関係情報 より
弊社FOODBOXの農業カオスマップにもまとめてあるように、農業支援サービスはスマート農業と呼ばれるものからメディア、人材系など多岐に渡ります。近年は他業界の企業が農業界へ参入し、農家向けサービスを開発・販売する動きが増えているため、今後も農業支援サービスの多様性は増していくと思われます。
しかしながら、数ある農業支援サービスの中でも、しっかりと利益を出して持続的な運営ができているものはごくごく一握りです。どうして持続的な運営が難しいのか。実際にあったFOODBOXへの問い合わせから、農業支援サービスの抱える課題とその解決策を考えてみましょう。
農業支援サービス開発のよくある課題
近年、弊社に寄せられる農業支援サービスに関連するお問い合わせは増加傾向にあります。どのようなお問い合わせが多いのか、ざっくりと紹介してみましょう。
- ◎農業支援サービスを開発したいが、農家の需要がどこにあるか分からない
- ◎需要調査を行いたいが、農家の方との繋がりが無く、どう進めていいか分からない
- ◎新しい農業支援サービスの構想はあるが、実際に形にするまでの進め方が分からない
- ◎農業界は非常に細かなセグメントに分けられるが、それらを的確に捉えることは難しく、市場規模予測や収益予測が立てられない
- ◎ターゲットとなる農家へのアプローチ方法が分からず、サービス利用を拡大することができない
こう見てみると、サービスの構想段階の課題・実際にサービスをローンチまでの課題・ローンチ後の拡大期の課題がそれぞれありますが、全てに共通しているのは「農業界という独特な市場に対して、どうアプローチすれば良いのかがわからない」という点でしょう。
多くの人に求められる農業支援サービスを作るには、他の業界の事業と同様の視点に加えて、農業界独特の視点も必要になっていくのです。
売れる農業支援サービスを作る4つのポイント
(1) 金銭的利益の追求は長い目でみる
ある「事業」を運営する上で、最も大切なことの一つにあげられるのが金銭的な利益。それはその「事業」が農業支援サービスである場合においても例外ではないでしょう。しかしながら、「短期的な金銭的利益のみを目的とした農業支援サービス開発は長く続かない」というのが実情なのです。
その大きな理由に、「農業支援サービスは、そもそも短期的な収益化が難しい」ということが挙げられます。サービスのターゲットとなる農家が営む農産物生産では、①マネタイズまでの時間軸が長い又は、キャッシュポイントが少ない ②売上規模に対して、生産にかかるコストが大きい 場合も多く、農業支援サービスにかけれらるコストに余裕があるわけではありません。つまり、サービス運営者目線での顧客単価は、大きくなりづらいのです。
そのため、農業支援サービスの開発を成功させるためには、投資回収とその先の金銭的利益を長い目で追っていくことが必要となります。例えば、サブスクリプション型のモデルでは、『顧客数×単価×継続期間×利益率』にて顧客生涯価値(LTV)が決定されます。農業支援サービスの場合、単価や利益率を上げることは難しいため、顧客数と継続期間をあげる、すなわち時間をかけて農家に寄り添ったサービスへ磨き上げることが、農業支援サービス成功の秘訣の1つと言えるでしょう。
加えて、金銭的利益を長い目で追っていくために、金銭的利益以外の「取り組み意義」を設定するというのも1つの手です。具体的には、
- ◎CSR活動の一環として
- ◎コーポレートイメージを醸成するため
- ◎他事業とのシナジーを生むため
などが挙げられます。
農業支援サービス単体での短期的な金銭的利益のみを追い求めるのではなく、設定したサービスの存在意義を求めて運営することが、長期的な金銭的利益につながるというケースもあるのです。
(2)サービスのターゲットを明確にする
農業支援サービスに限ったことではありませんが、農業支援サービス開発においても、計画当初からの「ターゲットの選定」がとても重要な意味を持ちます。
実は、全ての農家を対象とするサービスには既に競合がいるケースが多く、新規参入はとても難しいのです。例えば、確定申告をしない農家はいませんが、その「会計」という市場には農家向けサービスに限らずともfreeeやMoney Forwardといった会計支援サービスの競合が存在する、といったようなイメージです。
逆に言えば、競合がいない、もしくは少ないニッチな需要に対しての新規参入は、むしろ狙い目と言えます。つまり、「どのような農家の、どのような需要に応えるサービスにするか」をはっきりさせることこそが、農業支援サービス成功への鍵なのです。
ニッチな需要を汲み取るためには、計画段階の適切なセグメント分けと、そのセグメントに基づいた需要のリサーチが必須となります。一口に農家といっても、経営規模や作物によって細かいセグメントに分けることができるのです。
農家を適切なセグメントに切り分けてリサーチを行うには、農業界への知見が必要です。
FOODBOXは農家を対象としたリサーチ業務に関するナレッジと実績を豊富に持っています。
例えば、農業用ドローンの需要調査において『生産規模が合計30ha以上の米・麦・大豆農家数十軒に電話インタビューする』等、コネクションを活用したリサーチを担当させて頂きました。
調査対象となる農家とのコネクションには自信がありますので、リサーチでお困りのことがありましたら、下の緑ボタンより気軽にお問い合わせください!
(3)適切なアプローチ方法を選び取る
どのような農家のどのような需要に応えるかを決めてサービスを作っていくわけですが、同時にサービスをローンチした後、ターゲットにどのように知ってもらうかを考えなくてはなりません。どんなに優れたサービスも、知ってもらえなければ使ってもらえないものです。
狙ったターゲットに的確にアプローチするには、農家が情報収集でよく見るメディアを把握しておく必要があります。これも需要調査と並行してリサーチしておくべきでしょう。
本記事では、多くの農家が情報収集に用いているメディアをいくつか紹介いたします。広告出稿先の選定や広報活動の方向性の検討にご活用ください。
- 【農家が情報収集に用いているメディアの一例】
- ◎日本農業新聞:日本唯一の日刊農業専門新聞。農業系ニュースに強く、WEBメディアも存在。
- ◎現代農業:実用性を重視した農業月刊誌。WEBメディアも存在。
- ◎マイナビ農業:人材業界大手のマイナビが運営する農業系WEBメディア。
- ◎YUIME Japan:農家が悩みを投稿して、コメンテーターがそれに回答する形式のWEBメディア。
(4)現実的な価格設定とそれに基づいた売上計画を設定する
農業支援サービスの利用料の価格設定も、農家にとってサービス利用をするかしないかの判断に影響を及ぼします。需要調査の際に、どの程度の価格であれば利用したいと思うかの調査も同時に行うと良いでしょう。
以前、FOODBOXが農家を対象に「月額いくら程度までの農家向けWEBサービスであれば利用したいと思うか」のヒアリングを実施したところ、「毎月の携帯代(通信費)と同程度の5,000円くらいが上限」と回答した方が多く見受けられました。
もちろん、この金額は対象の農業支援サービスがどの程度の効用をもたらすかで変わるものではあります。しかし、多くの農家にとって月額5,000円以上の継続的な支払いは「高い」印象を与えるという事実は、頭の片隅に置いておいた方が良いでしょう。
ターゲットを元に市場規模を算出し、アプローチ方法を考案し、売上計画のロジックを組み立てる。これもまた農業支援サービスに限った話ではありませんが、こうした一連の流れを丁寧に行うことが、農業支援サービス成功への最大の近道なのです。
とはいえ、農業界には他の業界の方から見ると特殊に感じる部分もあるかもしれません。農業参入をする上で、コネクションが必要な場面や専門知識が必要な場面なども多々あります。そんな時は、我々FOODBOXのような、農業に特化した会社との協力も視野に入れていただけますと幸いです。
最後に
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
FOODBOXは、農業に関するノウハウや他社事例の知見を持っているため、農業支援サービス開発における的確な論点整理をお手伝いすることが可能です。
また、全国の若手農家(20代~40代)と独自のコネクションがあり、インタビュー形式での需要調査の実施も可能です。
農業支援サービスの開発を検討している企業様は、ぜひお気軽にご相談ください!
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